基本情報技術者~システム戦略~
情報システム戦略
情報システム戦略とは
情報システム戦略とは何でしょうっか?
情報システム戦略とは、情報システムを活用した機能別戦略です。
企業をピラミッド型の組織として捉えると、最も上位に来るのが経営理念であり、その下に、ビジョン、企業戦略、事業戦略、機能別戦略が続きます。
このうち、情報システム戦略は、情報システム部門の機能別戦略という位置にあります。
全体最適化
情報システム戦略を立てるうえで必須となる考え方が「全体最適化」です。
全体最適化とは、組織全体の効率化を図ることです。全体最適化の反対語は「部分最適化」です。
部分最適化を突き詰めると、部門は効率化されますが、全体的には足を引っ張る存在となることもあります。
このため、情報システム戦略を立案する際には、部分最適化ではなく、常に全体最適化を考えることが重要となります。
エンタープライズアーキテクチャ
具体的にどのようにして全体最適化を行うかというと、その手法の1つとして「エンタープライズアーキテクチャ」を用います。エンタープライズアーキテクチャ(Enterprise Architecture:EA)とは、大企業や政府など、比較的大きな組織のシステムを全体最適化するための手法です。
なにやら難しそうですが、覚えることはたったの2つです。
(1)エンタープライズアーキテクチャの定義
(2)エンタープライズアーキテクチャの4つの分類
(1)エンタープライズアーキテクチャの定義とは、「エンタープライズアーキテクチャとは、大企業や政府など、比較的大きな組織のシステムを全体最適化するための手法」です。
(2)エンタープライズアーキテクチャの4つの分類を以下にまとめました。
分類 | 説明 |
---|---|
ビジネスアーキテクチャ | 業務のこと。 |
データアーキテクチャ | 上記の業務を行う際に必要となるデータのこと。 |
アプリケーションアーキテクチャ | 上記のデータを処理するための機能のこと。 |
テクノロジアーキテクチャ | 上記の機能を実現するための技術のこと。 |
- エンタープライズアーキテクチャは横断的
エンタープライズアーキテクチャ導入前後の違いを下図に表しました。
部分最適化が進んだ組織では、システムが縦割りになっていて、横とのつながりがありません。
一方、エンタープライズアーキテクチャでは、システムを個別に分析するのではなく、4つの体系を使って、複数のシステムを横断的に分析します。

業務プロセス
業務プロセスとは
業務プロセスとは、一言でいうと「仕事の手順」のことです。業務は手作業とシステムから構成されます。さらに、システムはハードウェアとソフトウェアから構成されます。
つまり、業務とは、手作業とハードウェア、ソフトウェアを合わせたものといえます。
BPR
BPR(Business Process Re-engineering:業務プロセスリエンジニアリング)とは、企業全体の業務プロセスを「抜本的」に再設計する手法です。BPRでも、部分最適ではなく全体最適が使われます。
- 分業に対する反省
BPRは分業に対する反省から生まれた手法です。分業体制により、部分最適が進み、結果として全体の生産性が悪化することがありました。
そのことを踏まえ、BPRでは全体最適に着目し、生産性を効率よく上げることを目標としました。
BPM
BPM(Business Process Management:業務プロセス管理)とは、業務プロセスを見直して「継続的」に改善する手法です。
- BPRとBPMの違いを理解しておくことが重要
「BPR」は「抜本的」、「BPM」は「継続的」という違いがあります。例えるなら、BPRは大掃除、BPMは毎日の掃除といった具合です。
RPA
業務プロセスを改善する手法として注目を集めているのがRPAです。
RPA(Robotic Process Automation)とは、ソフトウェアロボットを用いて事務作業を自動化することです。RPAに関して次の2つの特徴を覚えておいてください。
- RPAは工場のロボットではない
RPAの「R」が「Robotic」の頭文字であることから、ロボットアームのような機械を想像するかたもいらっしゃるかも知れませんが、RPAはソフトウェアのロボットという点を覚えておきましょう。
- RPAは定型的な作業しか実行できない
RPAは「定型的な作業」(同じ作業の繰り返し)しか実行できません。途中で作業ルールが変わったり、高度な意思決定が必要となるような業務はできないということも覚えておきましょう。
BPO
これまでにご紹介してきた、BPRやBPM、RPAはいずれも「業務を改善する手法」でした。一方、BPO(Business Process Outsourcing)は、業務プロセスじたいを他社に外部委託してしまうという手法です。BPOは特に、経理、人事、総務などの管理部門の業務プロセスをアウトソーシングする意味で使われることが多いです。
ワークフローシステム
ワークフローシステムとは、紙の書類を電子化して、社内の決済申請手続きを効率化することです。これも業務プロセスの改善方法の1つです。
小休止!お試しトライ!過去問①
問1 BPRとBPM
問題
企業活動におけるBPM(Business Process Management)の目的はどれか。
平成28年度
ア.業務プロセスの継続的な改善
イ.経営資源の有効活用
ウ.顧客情報の管理、分析
エ.情報資源の分析、有効活用
解答
BPMの目的は、業務プロセスの継続的な改善です。BPRの業務プロセスの抜本的な改善と間違えないようにしましょう。
従って、解はア.となります。
ソリューションビジネス
ソリューションビジネスとは、顧客の業務上の問題を解決するサービス、または情報システムです。ソリューションビジネスを提供する会社のことを「システムインテグレーター(SI)」といいます。
ソリューションの形態
ソリューションは、サーバをどこに置くかによって、以下の形態に分類されます。
(1)オンプレミス
(2)ハウジングサービス
(3)ホスティングサービス
(4)クラウドコンピューティング
- (1)オンプレミス
オンプレミスとは、自社の敷地に自社のサーバを置くことです。機密保全の面で非常に高い安全性を維持できるというメリットがあります。しかし、費用がかかるというデメリットもあります。
- (2)ハウジングサービス
ハウジングサービスとは、他社の敷地に自社のサーバを置くサービスです。なお、サーバの調達・管理は自社で行う必要があります。
- (3)ホスティングサービス
ホスティングサービスとは、他社の敷地に置かれた、他社が所有しているサーバをレンタルするサービスです。サーバの調達・管理はサービス事業者が行ってくれます。
- (4)クラウドコンピューティング
クラウドコンピューティングとは、他社の敷地に置かれた、他社が所有しているサーバをレンタルするサービスです。ホスティングサービスと似ていますが、違うのは、契約しているサーバの所在です。- ホスティングサービスではレンタルするサーバの所在が明確
- クラウドコンピューティングではレンタルするサーバの所在が不明確
クラウドコンピューティングの種類
- IaaS
IaaS(Infrastructure as a Service)とは、ハードウェアなどの基盤(インフラストラクチャ)をインターネット上で提供するサービスです。
- PaaS
PaaS(Platform as a Service)とは、プラットフォーム(アプリケーションソフトウェアを動かすのに必要な土台)をインターネット上で提供するサービスです。「IaaSにOSを加えたサービス」とも言えます。
- SaaS
SaaS(Software as a Service)とは、ソフトウェアをインターネット上で提供するサービスです。「PaaSにアプリケーションソフトウェアを加えたサービス」とも言えます。
クラウドコンピューティングの出現前夜
クラウドコンピューティングは、突如世の中に姿を表したわけではありません。クラウドコンピューティングは、長い歴史の中から必然的に生まれた技術なのです。歴史を紐解くと、クラウドコンピューティングの元となっている技術があります。それが「SOA」です。
- SOAとは
SOA(Service Oriented Architecture:サービス指向アーキテクチャ)とは、ソフトウェアの機能をサービスという部品とみなし、そのサービスを組み合わせることでシステムを構築する手法です。
SOA以前は、システム会社の提供する業務パッケージを購入して業務システムを構築する必要がありましたが、SOAの登場により、必要な機能のみをサービスとして自由に選択して購入できるようになりました。
システムの活用促進と評価
BIとデータウェアハウス
BI(Business Inteligence)とは、社内外に蓄積されているデータを分析して、経営の意思決定に役立てようとする手法や技術のことです。以前は、BIを行うには専門的なアナリストが必要でしたが、「BIツール」を使用することで誰でも分析が行えるようになりました。
- データウェアハウス
データウェアハウスとは、意思決定に役立てるためのデータベースです。具体的には、ERPやCRMなどのシステム内にあるデータを取り出して、データウェアハウスに蓄積します。BIではデータウェアハウスに集約されているデータを元に分析を行います。
また、データウェアハウスに蓄積されたデータは、基本的に更新されたり、削除されたりしません。
ビッグデータとデータマイニング
ビッグデータとは、大量かつ多種多様で、更新頻度が高いデータの集まりです。
ビッグデータの特徴は、Volume(量:量が多い)、Variety(多様性:多種多様)、Velocity(速度:更新が速い)の3つで、3Vと呼ばれます。
- データレイク
データレイクとは、あらゆるデータをそのままの形式で格納するデータベースです。ビッグデータは多種多様なデータ(非構造化データ)の集まりであるため、あらかじめ決められた形式のデータ(構造化データ)しか格納できないデータウェアハウスには格納できません。そこで、ビッグデータはデータレイクに格納します。
- データマイニング
データマイニングとは、データレイクなどに蓄積されている膨大なデータから、有益な情報を取り出すための手法の総称です。
デジタルリテラシーの習得の重要性
デジタルリテラシーとは、情報を活用する能力です。一般に、「情報を集めたり、発信したりする能力」や「コンピュータやインターネットなどのITを使う能力」という意味になります。
- デジタルディバイド
デジタルディバイドとは、デジタルリテラシーの違いによって生じる、経済的・社会的な格差のことです。
小休止!お試しトライ!過去問②
問1 SOA
問題
SOAの説明はどれか。
平成27年度
ア.売上・利益の増加や、顧客満足度の向上のために、営業活動にITを活用して営業の効率と
品質を高める概念のこと
イ.経営資源をコアビジネスに集中させるために、社内業務のうちコアビジネス以外の業務を
外部に委託すること
ウ.コスト、品質、サービス、スピードを革新的に改善させるために、ビジネスプロセスをデ
ザインし直す概念のこと
エ.ソフトウェアの機能をサービスという部品とみなし、そのサービスを組み合わせることに
よってシステムを構築する概念のこと
解答
ア.から順に見ていきます。
ア.SFAの説明です。
イ.BPOの説明です。
ウ.BPRの説明です。
エ.SOAの説明です。
従って、解はエ.となります。
最後に
今日からストラテジ系でしたが、皆様、いかがでしたでしょうか?
私的には、ITパスポートで散々やったところなので、楽でした。
ちなみに、テキストを読まないと完全な学習は行えませんので、ぜひ下で紹介している本をご購入いただけたらと思います。
こちらが参考にさせていただいているテキストです。


ではでは、参考までに
コメント