「AI開発って、指示すればアプリが一瞬でできるんでしょ?」
最近、こう聞かれることが本当に増えました。
こんにちは、しらかわるーむの白川秋です。熊本でAndroidアプリを個人開発しています。
結論から言うと、AIを使った開発は確かに速いです。しかし、一瞬ではありません。
そこで今回は、僕のAI開発の現場を「密着24時」の形でお見せします。登場するエラーや出来事は、すべてここ最近の開発で実際に起きたものです。ただし、読みやすさを優先して、ある一日の流れに再構成しています。
この記事のポイント
- AI開発は速いが「一瞬」ではない。現場のリアルを時系列で公開
- AIは仮説を出す係、真因を決めるのは人間。その分担を実例で解説
- 15年温めた構想が動いた理由と、AIでも速くならない仕事
登場人物とAI開発の道具箱
まず、この現場の登場人物を紹介します。
僕はAndroid版の担当です。一方で、東京にいる相棒の「ドラマのちえ」さんがiOS版とデザインを担当しています。つまり、熊本と東京の二拠点チームです。
次に、道具箱の中身です。
以前は、複数のAI開発ツールを使い分けていました。しかし今は、コードを書くのも、解析もデバッグも、Claude一択です。
使っている言語は次のとおりです。
- TypeScript(React Native / Expo):今の主力。iOSとAndroidで同じコードを使える
- Kotlin(Jetpack Compose):Android専用で作るアプリで使用
- JavaScript(Node.js):データ変換などの補助スクリプト
- バックエンド:Firebase
特にTypeScriptは、AIとの相性が良いと感じています。なぜなら、型があるおかげで、AIが書いたコードの食い違いに早く気づけるからです。
ちなみに、開発機はWindowsで、Pythonは入っていません。そのため、補助スクリプトはNode.jsで書いています。なお、ブログのサムネイルだけはChatGPTの画像生成を使っています。
7:00 昨夜のビルド結果を見るところから始まる
朝一番の仕事は、寝る前に回したビルドの確認です。
画面には「BUILD FAILED in 19m 27s」の文字。656個のタスクを全部こなしたうえで、最後の最後で止まっていました。
原因は、署名用の鍵ファイルが見つからないことでした。実は、Expoの「prebuild --clean」というコマンドは、androidフォルダを丸ごと作り直します。そのため、中に置いていた設定や鍵が消えてしまうのです。
AIにログを見せると、原因は数秒で特定できました。ところが、失った19分は戻ってきません。
これが最初の本音です。AIは答えを出すのは速いです。しかし、ビルドの待ち時間までは縮めてくれません。
対策として、prebuildのたびに署名設定を戻すバッチファイルを作りました。以来、同じ失敗はしていません。
9:00 AI開発の引き継ぎ|前提はAIが覚えている
作業に入るとき、以前は必ず長い前置きを書いていました。開発機はWindows、ビルドはローカル、推測で直さない、といった具合です。
ところが最近のClaudeは、過去のチャットを参照できます。決めたルールも覚えてくれます。そのため、前提の説明はほぼ不要になりました。「昨日の続き」で話が通じます。
では、「これを解析して」も不要になったのか。本音を言うと、半分だけ正解です。
なぜなら、AIが覚えているのは会話の中身だからです。今のソースコードそのものではありません。例えば、ビルドで作り直されたファイルや、ちえさんがiOS側で直した箇所は、過去の会話に残っていません。
そこで、今は頼み方を変えました。前提の説明はAIに任せます。ただし、触るファイルだけは最新版を渡し、「これを解析して」と頼みます。
つまり、引き継ぐのは「文脈」、渡すのは「現物」です。
知らないと損するAIツール15選|作業時間を半分にする神アプリまとめ
11:00 課金テストで「アイテムが見つかりません」
この日の本題は、ちえさんが作ったiOSアプリ「SAMURAI LEGENDS」のAndroid移植です。
画面の崩れやフォントの問題は、AIと一緒に順調に片付きました。ところが、最後に大きな壁が現れました。
本編を解放する購入ボタンを押すと、「アイテムが見つかりません」と表示されるのです。
AIは次々に仮説を出してくれました。
- 署名鍵がPlay Consoleの登録と合っていない
- 購入の前に商品情報を取得していない
- 新形式の商品に必要な「オファートークン」がない
どれも筋の通った仮説です。実際に、一つずつ確認して修正しました。それでも、エラーは消えませんでした。
15:00 真因は「テストトラックの番号ずれ」だった
最終的な原因は、コードの中にはありませんでした。
開発版のバージョン番号は「2」でした。これはクローズドテスト版と同じ番号です。一方で、テスト端末のアカウントは、番号「1」の内部テストにしか参加していませんでした。
結果として、端末からはクローズドテスト版の商品が見えなかったのです。番号を揃えたら、あっさり購入画面が開きました。
ここに二つ目の本音があります。
AIの仮説は、どれも間違いではありませんでした。ただし、答えはPlay Consoleの設定画面にありました。そして、その画面を見られるのは僕だけです。
要するに、AIは画面の外を知りません。事実を集めて渡すのは、人間の仕事なのです。
17:00 AI開発で一番大事にしているルール
僕のAI開発には、どのアプリでも守っているルールがあります。
それは「真因を確定してから動く」です。ログで原因を確かめる前に、推測でコードを変えることは禁止しています。
例えば、乗換アプリ「くまモビ」で地図画面が突然落ちる不具合がありました。AIに聞けば、それらしい修正案はいくつも出てきます。
しかし、僕はまずAndroidのログ(logcat)を取りました。すると、地図ライブラリの現在地機能で、データの取り合いが起きていると分かりました。
そこで、その機能だけを自前の仕組みに置き換えました。結果、クラッシュは止まりました。
もし推測で直していたら、関係ない場所を何か所も書き換えていたはずです。AIが速いからこそ、ブレーキ役のルールが必要なのです。
Android Developers「Logcat でログを書き込んで表示する」
19:00 AIでも速くならない仕事がある
夕方は、コード以外の仕事に取りかかります。
くまモビには、観光スポットの写真を載せています。そのため、写真の使用許可を一件ずつ取っています。
例えば、熊本県への利用許諾申請は書類での手続きでした。施設によっては、個人からの依頼に前例がないと言われ、依頼書の提出を求められました。
また、ストアの審査でも足止めがありました。ある部品が不要な権限を持ち込み、「健康に関するアプリ」の申告でエラーになったのです。結局、権限を外してバージョンを上げ直しました。
これが三つ目の本音です。
コードを書く速度は、AIで劇的に上がりました。一方で、人との約束や審査の速度は、昔と何も変わりません。むしろ、開発が速くなった分、この差が目立つようになりました。
21:00 東京のちえさんへ、AIと変更報告書を書く
夜は、ちえさんへの報告の時間です。
実は、iOS版とAndroid版はコードが別々に管理されています。そのため、僕がAndroid側で直した内容は、ファイルを渡すのではなく報告書で伝えています。
この報告書づくりも、AIに手伝ってもらいます。まず、変更点をAIに整理してもらいます。次に、僕が内容を確認して、iOS側に関係する点だけを残します。
ここで大事なのは、最後に必ず人間が読むことです。なぜなら、ちえさんが知りたいのは「何を直したか」より「iOSにも影響するか」だからです。その判断は、二人の事情を知っている僕にしかできません。
23:00 AI開発の本音|15年止まっていた構想が動いた
一日の終わりに、少し昔話をさせてください。
くまモビの構想が生まれたのは、15年ほど前です。きっかけは、妻の「熊本の交通は放射状だから、横の移動が大変」という一言でした。
しかし、当時の僕には、一人で作れる規模ではありませんでした。バス会社や鉄道6社の時刻表をつなぐ、乗換検索の仕組みが必要だったからです。
状況を変えたのが、AIの進化です。2026年6月に本格的に開発を始め、9月14日にGoogle Playで正式リリースできました。
これが最後の本音です。AIがなければ、くまモビは今も構想のままでした。とはいえ、AIがアプリを作ってくれたわけではありません。何を作るか決めたのも、許可を取りに走ったのも僕です。
くまモビの使い方完全ガイド|熊本の乗り換え・観光アプリの全機能を解説
まとめ|AI開発は「速い相棒」と「決める人間」の共同作業
最後に、密着24時で見えたことを整理します。
- AIは答えが速い。ただし、ビルドや審査の待ち時間は縮まらない
- AIは仮説を出す係。真因を決める事実は、人間が集める
- 推測で直さないルールが、AIの速さを生かすブレーキになる
- コードは速くなったが、人との約束は人の速度で進む
つまり、AI開発は「全部おまかせ」ではありません。速い相棒と、決める人間の共同作業です。
それでも、僕は明日もAIと一緒に開発します。一人では届かなかった場所に、実際に届いたからです。
なお、くまモビは10月5日からクラウドファンディングに挑戦します。AI開発で生まれたこのアプリを、熊本の観光に役立てたいと考えています。よければ、お気に入り登録で応援していただけるとうれしいです。
くまモビ(Google Play)
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ではでは、参考までに

